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投稿日付: 2001年 12月 06日 16:06
タイトル: 映画「陰陽師」

夢枕獏原作、平安時代の陰陽師である安倍晴明の物語の映画化。
エンディング・ロールには小説を原作としている旨の表示がでますが、映像媒体であるためか同作を原作とする岡野玲子によるコミック「陰陽師」を意識しているのは明白です。
とはいえそれは悪影響ではなく、もとから2時間弱の枠では消化しきれない題材を、雰囲気のある映像や小エピソードで支える形になっていて映画としてのまとまりが出ています。

主人公の安倍晴明はみていると色っぽい男なのですが、あとからパンフレットを読んで納得なのが実際に狂言師である野村萬斎が演じているため。
パンフレットもコミックスも映画を見てから見た(私は予備知識をなるべく仕入れないで映画を見るんです。)のですけど、この晴明はイメージにぴったりでした。

また映画的なまとまりのためヒロイック・ファンタジーぽい筋書きになってますが、それを見栄えするようにしているのが、映画序盤から悪役とすぐわかる真田博之演じる導尊。
この人の狂気一線を見せる悪役というのは非常に好きです。開き直ってからの「悪役高笑い」がよくて。

目を転じてそれ以外のキャストというと、観客の誘導役(つまりワトスン役)なのが伊藤英明が演じる源博雅。
映画だけ見ていると怪現象に必要以上の驚き方をしていて大げさな気がしていましたが、これもコミックの博雅を再現するという意味では納得がいくものでした。
また取り柄といえば笛と、あとは勇気があるくらいしか映画では捉えられない博雅ですが、コミックスを読むと平安時代の天上人が、音楽、つまり雅楽や、男女の営みが政と同じレベルで重要視していて、そのなかで博雅を含めた「雅を解する」源氏の一族にどれだけ力があったかが理解できます。

男三役の一方で、女性の配役にはちと疑問符です。
小泉今日子と今井絵里子がそうなのですが、どちらも役どころに間に合うだけの演技と貫禄がなく感じられ、特に小泉今日子演じる青音の設定からすると不満が残りました。

とはいえ日本製の娯楽映画としては、映画館でみて満足できる作品でした。
怪獣や放浪のテキヤや釣りばっかりやっているオッサンの話ばかりでなく、本作くらいのエンターテイメント映画がコンスタントに製作されれば、日本映画界というものも世界に通用するようになるのではないでしょうか。

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