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タイトル: 没原稿っ!その2
初出日付: 2001年 08月 18日 12:34
すいません、今回も没原稿です。
今回は前回の「ガンダム」に対して「スタートレック」です。
本稿では具体的な作品説明に頼らない、汎用な論とする予定です。
また注釈なども、HTMLらしいリンクをつけた形にするつもりです。
とはいえ手間なんだよな・・・・。
注訳のほうが量が多いという噂は無視です(爆)
継続の要素「スタートレック」
「STAR TREK」は最初のシリーズ(以後"OST")の放映から30年を数えるシリーズです。
宇宙船U.S.S.Enterprise(*1 が宇宙の未探査域を調査旅行し、出会った文明や事件を描くTVドラマです。(*2
放映話数はけた違いで、「STAR TREK Next Generation」(以後"TNG")、「STAR TREK Deepspace Nine」(以後"DSN")、「STAR TREK Voyger」(以後VOY)、いずれも1時間番組(特番は前後編だったり2時間だったりもある)で100話を越えます。
TVドラマ4作(*3、映画8作(*4、アニメ1作のほか、オリジナル・ノベル(*5 も多数でています。公式とされるのは映像作品ですが、世界観などを理解した上で書き下ろされる作品などは、オフィシャルを破壊するどころか奥行きを広げることに役立って相乗効果となっています。(*6
また出演俳優や脚本家が後年になって、新シリーズや劇場版の監督を務めたりオリジナル・ノベルを著したりもしていて、その広がりは新作の製作を含めてとどまることを知りません。
この作品の魅力は「未知への挑戦」に尽きます。「未知」はシリーズの製作時期によって異なり、OSTとVOYは「前人未到」(*7、TNGとDSNは「異文化」といえるでしょう。
そしていずれも共通しているのは、初めて出会ったものを拒否せず、頭から戦わず、交流あるいは理解し、対等な関係を築こうとする姿勢です。(*8 これは同じ宇宙船(DSNではステーション)内での人間関係でも描かれ、ドラマのなかでのリアリティーを盛り上げます。。
「STAR TREK」はDSNを除けばいずれも旅をする話で、もとより「宇宙の幌馬車」といったところが原作者(*9 の狙いでした。そのため宇宙船も事故を起こしたり損傷したり、それを修理したり同じタイプが登場したりということが描かれても不自然ではありませんでした。そしてどうしようもないときには沈没までさせてしまいます(*10。
DSNは舞台である"Deepspace Nine"は旅しませんが、多くの来訪者が訪れることで旅することと同様の変化が起こるようになっています。
面白いのは大枠では旅の話であるのに、各話を見ると乗組員が宇宙船へ戻ってくる話でもあることです。この二重構造が、冒険しっぱなしでラストまで突っ走る活劇やスローテンポのドラマのような偏りがなく、山場と休息をバランスよく描くことの出来た理由かもしれません。
このような長期シリーズでは物語世界でも数々の変化が起こります。宇宙にはいくつかの人種と国家があります。各シリーズにおいての情勢は大体決まっていますが、OSTで敵役国家だったクリンゴン星人たちは、TNGでは宇宙連邦の加盟国になっており(*11、乗務員にクリンゴン人がいるのはあたりまえになっています(*12 し、TNGシリーズ後半の敵性集団だった機械化人類「ボーグ」(*13 も主人公たちと接触することで性質を変えていきます。
地球人類が中心になっている宇宙連邦も内部に力関係や思想の違いがあり、劇場版第6作や第8作では物語のカギは宇宙連邦上層部が一枚岩ではないことにありました。
新シリーズ毎に登場する宇宙船やメカ、乗務員のファッションやアイテムやライフスタイル(異星人のライフスタイルも!)もファンの目をひきつける点です。そのなかでもやはり看板なのは主役船で、歴代のエンタープライズはそれぞれが独特の優美で個性的なデザインをしています。
さすがにOSTのEnterpriseをスタイリッシュとはいえませんが、メカとしてのデザインはいまだに個性的です。映画版からは、円盤と円柱をまっすぐな支柱でつなげたような初代から改装されたということでブラッシュアップされたデザインで登場(*14、作中でもファンの間でも「宇宙の白鳥」と言われるほどの評価を得ています。またTNGのEnterprise(*15、映画版第8作のEnterprise(*16、VOYのVoygerと、それぞれが独特の構成と線の組み合わせでデザインされています。
異星人という点では、OSTから宇宙連邦の加入国でミスター・スポック(*17 で有名なバルカン星人や、すでに触れたクリンゴン人をはじめとしてシリーズが増えるたびに人種も増え、特殊メイクでのバラエティーも増えてきました。どうじにそれぞれの食べ物や着るもの、生きることに対する哲学などが創作され、各キャラクターの奥行きを深くしています。
またOSTの当初から、レギュラーとなる乗務員は地球人であっても各人種からなるべく平等に選ばれており(*18、シリーズが進むごとにその「平等」の枠は地球人だけでなく登場する異星人も含むようになっていると思われます。TNGでは自分に心があるのかどうか悩むアンドロイドが宇宙連邦の士官としてレギュラーメンバーに加わっていますし、TNGのEnterpriseは乗組員が家族ごと船に住むため、乗務員の子どもたちがメインとなるエピソードまであるのです。
そして人としてのドラマだけでなく異星人であるがゆえに起こる事件もドラマとして描かれていくのです。
このような確固とした「世界」があるため「宇宙船が舞台」とした場合でも「他の宇宙船」「他の場所」という設定やお話は無理なく作ることが出来ます。ドラマの主役である乗務員たちや主役船「エンタープライズ」が交代したり、別の船やステーションへ舞台を移しても物語が成り立つだけの舞台装置がそろっているのです。
(*1 米国のスペースシャトル1号機「Enterprise」は、この作品のファン活動でこの"U.S.S.Enterprise"から命名された。
(*2 DSN、VOYは"U.S.S.Enterprise"ではなく、それぞれ宇宙ステーション"DeepSpace Nine"、"U.S.S.Voyager"が舞台となる。
(*3 「STAR TREK」(OST)「STAR TREK The Next Generation」(TNG)「STAR TREK Deepspace Nine」(DSN)「STAR TREK Voyager」(VOY)
(*4 「STAR TREK The Motion Picture」「STAR TREK 2 Wose of Kane」「STAR TREK 3 Serch Mr.Spook」「STAR TREK 4」「STAR TREK 5」「STAR TREK 6」「STAR TREK Generations」
(*5 映像作品ではなく小説独自のストーリー。TVシリーズのエピソードの隙間や前後などを描く作品が多い。登場した事物はものによってはその後の映像作品で反映されたりするがノベルそのものが公式とされることはない。
(*6 日本語版は早川書房からOSTとオリジナル・ノベルが「宇宙大作戦」劇場版が「スタートレック」TNGが「新・宇宙大作戦」として、角川文庫からVOY、DSNの両シリーズが翻訳・出版されている。角川のシリーズは2001年8月現在休止中。
(*7 OSTは未探査宇宙の単独5年調査航海という設定(ただし補給などには戻っている)。VOYはある力によって地球とは銀河系の反対側へ飛ばされたU.S.S.Voyagerが、宇宙連邦域へ帰還しようと未踏破宇宙を旅する。
(*8 OSTでこれが明確に描かれていたかどうかは難しい点である。艦長であるカークのヒーロー譚の色合いが強いエピソードも多いからである。しかしそれ以後のTVシリーズでは鮮明に扱われていると思える。
(*9 Jene=Lodenberry(-1998)。シリーズ・プロデューサーで世界観構築という点では「神様」であった。劇場版第5作完成間近に他界。
(*10 型は後述するが、OSTからの艦は劇場版3作目で、TNGのE型は劇場版7作目で破壊される。
(*11 加盟へつながる原因が劇場版第6作で描かれた。
(*12 このギャップが良くわかるのはTNGを見て劇場版第6作をみるとよい。TNGでレギュラーでクリンゴン人のウォーフが活躍しているが、同映画ではOSTで艦長だったのカークは前半にクリンゴン人への憎しみをあらわにしてみせる。
(*13 知的生命に機械を埋め込んで集団意識に取り込んでしまう、アリをモチーフにしたと思われる集団行動をとる機械生命体。「ボーグ・シップ」と宇宙連邦が呼ぶ巨大な立方体宇宙船で移動し、出会う文明はすべて自分たちに属させようとする。
(*14 劇場版1〜3まではOSTで登場した艦の改装で、4〜6で登場するのはアルファベット「A」が付加された船番号をもつ同型艦の改装船である。
(*15 D型。B〜C型が主役艦作品はなく、B型は映画第7作で、C型(平行宇宙のだが)はTNGのTVエピソード内でゲストとして登場。
(*16 E型。ボーグとの戦闘を考慮して宇宙連邦の同クラスの船としては初めて専用の戦闘艦として建造された。それまでは武装もあったが宇宙連邦の宇宙船はどの艦種でも調査船としての設計であった。
(*17 実際はスポックはバルカン人としては異端児である。バルカン人と地球人の最初の混血児であるためで、ここにも「未知」というテーマがみえる。
(*18 言うまでもなく物語設定の話。実際の役者は撮影や契約の都合でほとんどは米国籍。
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