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タイトル: 没原稿っ!
初出日付: 2001年 08月 15日 11:47

 ここで連載(?)している「継続の要素」の没原稿です。
言うまでもなく、没であっても無断で転載/引用/流用しないでくださいね。
 具体的な作品説明が組み込んでありますけど、本稿では具体的な作品については注釈だけになる予定です。
 ちなみにもう1つボツ原稿あるので、それもそのうちに。
ほんとに「雑記」ですよね、ここ。
 正式な記事はいつになるのかって?(大爆)。




「継続の要素」2
 別のコーナーで、ここって切り出さないといけませんね(汗)。

今回は「ワールド」によるシリーズの継続について書きます。
具体的作品として今回は「機動戦士ガンダム」を取り上げ、次回以降「スタートレック」、「グイン・サーガ」を取り上げます。
なお、文中で「読者」や「視聴者」をひとくくりとして「受け手」という言葉を使います。

3.舞台の継承
 ここで取り上げるのは、端的に言うと「主人公が変わっても同一世界で作品が成り立つ」という話です。
 物語を構築する際には、登場人物たちが冒険したり生活したりする舞台に、説得力がなければなりません。
 主人公が活躍するためには、その「主人公にとってリアル」な障害や出来事、そして人間関係が必要となり、そのような主人公の「周辺環境」が受け手にたいして説得力を持つには、さらにその外側の「環境」、つまり「世界」に説得力があると一般に言われる「リアルさ」(*1 が醸し出されます。
 この「物語世界の構築」は、あくまで物語の内容のために必要とされる(と作者が感じる)部分を理詰めていくため、商業的な影響を受けにくい部分です。
 逆にこの部分を商業目的な効率に横槍をつかれると、ほとんどの世界が根腐れをおこし、TVアニメなら放送終了後は残ってもマニア(あるいはオタク)の中でだけ、という事態を引き起こしかねません。

 今回は例は少ないので、具体的に取り上げていきましょう。
 これに成功している作品を前編に書いた「20年以上継続している」という基準に沿ってあげれば、和製アニメでは「機動戦士ガンダム」、世界一の長編小説「グイン・サーガ」、海外では「スタートレック」となります。

 まずは「ガンダム」から。
 この作品は2本日本最大手のトイ・メーカーであるバンダイのマーケティングと切っても切れないシリーズなのですが、今回のお話に関わるのは「機動戦士ガンダム」と、その世界を同一とする作品のみです。それでもTVアニメーション4作(*2、オリジナルビデオアニメーション(以後"OVA")3作(*3、劇場作品7作(*4 に及び、「ファースト」と呼ばれる「機動戦士ガンダム」が放映されてから20年を越えています。
 「ガンダム」の魅力は受け手の実感しやすい「人と人間関係のドラマ」と「戦争の『イヤ』さ」と「メカ」でしょう。
 特に「モビルスーツ」と呼称されるロボット兵器は看板で、このマテリアルを使って違う物語世界を構築したTVアニメ(*5 が何本も制作され、それなりに人気継続している作品もあります。

 「ファースト」に話を戻すと、物語のテーマは主人公アムロが人として成長するとともに、「洞察、認識、コミュニケーション能力に長けた宇宙に対応する新人類」である「ニュータイプ」へも成長していくことです。
 「モビルスーツ」という「メカ」はこの成長の度合いを主人公の活躍によって表現するアイテムです。物語の中でも皮肉られていますが、主人公が敵を撃墜することが上手に、スマートになっていくにつれて主人公の「ニュータイプ」としての「すごさ」を映像的に表現します。
 同時に、戦争の中で個人が敵の個人を識別し、兵士という部品ではなくお互い一個人として接触するための必要不可欠な舞台装置でもあります。

 少々前後しますが、巨大ロボットをこのような「主人公の活躍を拡大してみせる装置」とする場合、1番見栄えがするのは「戦闘」であり、それが受け手に納得して受け入れてもらえるのは「侵略撃退」か「戦争」(←ヤな考えですが。)の場合です。
 「ファースト」ではこの中庸を取っています。敵は「軍国主義の宇宙生活者で地球を侵略しようとしている」に対して主人公は「それを防ぐ地球連邦軍」の一員となります。
 ですが物語の所々で、自分の部下や連れ合いのために戦い、死んでいく敵士官(*6 、敵役国家元帥の息子にもかかわらず最前線で戦うお坊ちゃん(*7 念のために行って書いておくと、当人は有能だった)、敵側に居るニュータイプ、「かあさーん!」と叫びつつ死んでいく敵兵、連邦側の姑息な事を言う首脳などの登場人物なを配置することで「絶対の善悪」の色分けが灰色になっている印象を与え、受け手の知る現実の「灰色」により受け手側が人間関係や組織構造や対立にリアリティーを感じるようになっています。
 このような中で起きた戦争を舞台とし人型兵器が活躍するための前提条件として、SF的な「スペースコロニー」と「ミノフスキー粒子」という存在があります。
 スペースコロニーは言うまでもなく、「宇宙生活者」の生活空間であり、主人公も物語りの冒頭で、あるスペースコロニーに住んでいますし、敵はみんなスペースコロニーの住人であることで「外敵」という立場を表しています。
 「粒子」の方は詳しくは述べませんが、このために遠距離で現実の米軍が湾岸戦争で使用した「トマホーク・ミサイル」のような遠距離からの攻撃は出来なくなり、そこで接近して戦う兵器として「モビルスーツ」が使われるというのがこの世界設定です。
 この「接近しないと戦えない」という状況とロボットが主人公の活躍を拡大表現するとともに、戦場で敵として出会ってしまうにもかかわらず、有能な兵士として特殊な兵器に登場しているがために、主人公アムロと敵側のニュータイプであるララァは互いを一個人と認識し互いに意思の疎通をして、物語の主題である「ニュータイプ」がどんな存在になりえるかを理想として受け手に説明します。
 ここで、本当に倒すべき敵は軍国主義の中枢だと主人公たちは結論し、地球連邦が腐敗した組織であっても戦争に勝つことに協力することで物語は収束します。

 テーマは主人公の成長ですが、ここまでのべてきた主人公を引き立てる設定の数々が、主人公抜きでも舞台装置として有効であるということです。
 それは「モビルスーツ」という人型メカが独立して作品を成してしまう魅力を付与し、主人公以外の人間が物語の世界の中には多く居て、それぞれの苦難や戦いをしていたという「別の物語」を生み出す余地を作ります。
 この「余地」が20年もの間に続編やサイドストーリーを何作も作り出すことになりました。
 ただし、「ファースト」以降の作品はいずれもマーケティングの影響を強く受けていることもあり恣意的な作品構成をもちます。そのためいずれも「ファースト」ほどの評価は受けていません。(*8
 主人公が異なる後続作品が制作できたのは「ファースト」でそろえられた舞台装置が、シリーズの背景世界を支えるほどのものとして、継続されたからなのです。

(*1 ロボットアニメ製作会社の代名詞とも言えるサンライズの作品群を、ガンダムを始めとする物語内で物理的にシリアスな路線を「リアルロボット系」、一方の小学生が巨大ロボットを操縦するなど理屈抜き活劇ヒーロー路線を「スーパーロボット系」と二分する。
例を少数だけあげておく。
リアルロボット系:「機動戦士ガンダム」「重戦機エルガイム」「装甲騎兵ボトムズ」
スーパーロボット系:「トライザーG7」「無敵鋼人ダイターン3」「絶対無敵ライジンオー」「勇者王ガオガイガー」
(*2 「機動戦士ガンダム」「機動戦士Zガンダム」「機動戦士ガンダムZZ」「機動戦士Vガンダム」
(*3 「機動戦士ガンダム0080"ポケットの中の戦争"」「機動戦士ガンダム0083"STARDUST MEMORY"」「機動戦士ガンダム第08MS小隊」
(*4 「機動戦士ガンダム1」「機動戦士ガンダム2/哀戦士編」「機動戦士ガンダム3/めぐりあい宇宙(そら)」「機動戦士ガンダム"逆襲のシャア"」「機動戦士ガンダムF91」「機動戦士ガンダム第08MS小隊"ミラーズ・リポート"」(同名OVA短縮編集/劇場版)「機動戦士ガンダム0083"ジオンの残光"」(同名OVA短縮編集/劇場版)
(*5 「機動武闘伝Gガンダム」「新機動戦記ガンダムW」「機動新世紀ガンダムX」「∀・ガンダム」
(*6 言うまでもなくランバ・ラルである。この敵士官はまるで土建屋の小企業のような雰囲気を持つ1部隊の長として登場し、序盤の活躍で天狗になった主人公が越えるべき「冷静で有能で物分りの良い大人」という壁として立ちはだかる。
 また、部隊への補給が上層部でのいさかいのために滞り、ゲリラ戦を仕掛けて失敗、主人公たちの目前で手榴弾で自爆するなど「世知辛い社会」と「気高さ」ということを体現していることから人気が高い。(補足:だが、本当に戦争のプロであれば自殺は論外な気がする。
(*7 ガルマ・ザビの事である。物語の敵国であるジオン公国の支配者デギン・ザビの末っ子。本編では若年にもかかわらず米国西海岸の占領軍地方方面軍指令として登場、自ら戦闘機隊を率いて最前線に身を置く現場派。だが占領地での政策もなかなか人道に劣らないものだったようで、有力者とのパーティーなどを開いたり市長の娘と恋に落ちているなど、戦争がなければかなり優秀な人物として評されたであろう人柄を見せてもいた。
(*8 これはバンダイのガンダム関連商品のラインナップを見ると一目瞭然である。
「ファースト」とは物語背景を異にする「G」「X」「X」「W」「∀」を含めても、
1番の売上げは「ファースト」関連で、マーケティングの結果作られるのも「ファースト」関連が最もラインナップや再販、リメイク商品が多い。

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