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タイトル: 物語の内がわで生きる
初出日付: 2001年 05月 14日 15:23
題からはわかり辛いかもしれませんが、今回は「物語のリアリティ」という話です。
「リアリティ」とはいいますが人は神にはなれませんから、非の打ち所のない世界を創ってしまうことは出来ません。
そうではなくて「物語」の中でその「世界」が存在することに、どれだけの説得力のあるかと言うことです。
具体例をあげましょう。「指輪物語」と「フォーチュン・クエスト(以下FQ)」です。
「指輪物語」は、描かれる期間のは物語中の時間で1年ちょっとですが、その世界には創生神話が別にあり、神々やエルフ、ドワーフがどのように生まれ、どういう家系があり、どういう言語があるかといった世界背景がはっきりあります。
(指輪物語の「世界」はオーケストラの旋律から創造されるです!)
同時に作中での地理や食事、建物やダンジョンの構造、生活習慣や人間の政治体制などの描写も多く、説得力のある総合的な仮想世界創作の手本といえるでしょう。
「FQ」はそれほど精密な世界解説は持ちません。
ですが主人公たちのおくっている「生活」については、食事・料理を中心に、駆け出し冒険者である主人公たちの経済状況や、服装や他のキャラクターとのコミュニケーションの「のどか」さで補われています。それらに添えられるチラシ風の挿絵などがそれを補強します。
特に冒険のための移動手段と食糧に関しての記述は欠かされることはなく、冒険のオチの面白さと並んで物語世界の支えとなっています。
それは世界全体を設定してしまうのではなく、「主人公の視点」を「読者の視点」として、その視界に入るものを描くだけでほとんど成立しているのです。
これは主人公が知らないこと、わからないことは設定する必要がないということでもあります。
また主人公たちがいわゆる「政治」と無縁であることも作用しています。王女と友達だったりはしますが、「政治」にふさわしい重い話題はカケラも出てきません。
逆にTRPGフリークや、電源ゲームのRPGなどを遊んでいる読者は思わず笑ってしまう物語の「ネタ」というか「話題」がとてもよく出来ています。
以上は「全周囲的に設定を創る」「見える範囲内を充実させる」という二つの手法といえるでしょう。
そして第3の手法がありますが、その前に私が「悪い例」と思うものを上げておきましょう。
一つは「魔術師オーフェン」シリーズ。
なぜオーフェン1人が皮ジャン・皮パンな「ロックバンド兄ちゃん」なのでしょう?
他にあのような服装の人物は一人も出てきません。
これでは「竜の牙」の組織内の抗争だとかを一生懸命引き立てても役に立ちません。
あるいは、追跡してくる追っ手が同様のカッコをしていたりすれば、それはその世界のつじつまとして合うのですが。
もう一つは「機動戦士Zガンダム」。
私はガンダム・フリークですが、冷静なSFファンな部分が反発する部分があります。
この作品で登場する巨大人型兵器モビルスーツ(以下MS)は、ほとんどが「試作機」です。そして「試作機」では戦争は出来ません。
前作「機動戦士ガンダム」で描かれたMSは、維持・修理には部品が必要なハイテク兵器であり、戦闘で消耗するためそれらは大量に消費されます。
それはその兵器が生産ラインに乗った量産製品でなければ補充が成り立ちません。
このあたりは同じガンダム・シリーズの「0083」や「第08小隊」などで逆説的に窺い知ることが出来ます。「小隊」では後半の主人公機は現地調達のMSを繋ぎ合わせたものです。それにしちゃカッコよすぎるし高性能ですが・・・。最初「ガンダム頭」だった機体が損傷して「GM頭」になっていたりもします。
これらの問題を避けるために、主人公機が被弾しなくなったりするのは、問題があべこべです。(これが極端なのが「ガンダムZZ」。)
さて、第3の手法です。
こは上の2作品でもとりいれられてはいますが、「世界のリアリティーを作り手が考慮しない要素を持たせる」という方法です。
これには複数の方法があります。
一つ目は3−1としましょう。
これは舞台を過去・現代を含む現実(あるいはそのパラレルワールドの類)か、認知度の高い世界に類似させること。
これにより、作り手側が詳細に設定を行わなくても、読者がそれぞれの知識で自動的に補ってくれるためです。
中世ファンタジーのジャンルも、これに近いものがあります。
「指輪物語」とTRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」等のおかげで、エルフやドワーフや竜がいる「中世ファンタジー」という世界観の認知度が非常高いためです。
「オーフェン」もこの要素を含むでしょう。
3−2はアクション/スリラー映画などの手で、主人公を中心にハイスピードで物語を展開することにより、描かれる以外の部分を意識させないという方法です。
小説では難しいですが、映画なら「マトリックス」「インディージョーンズ・魔境の迷宮」はこれにあたります。
「ターミネータ」の1作目もこの要素が強いでしょう。
3−3は「描く部分を限定して、その中で十分な設定を行う」という手です。
「スター・トレック(以下ST)」「スターウォーズ(以下SW)」などがこれに該当します。
「ST」では、描かれているのはスターフリート(宇宙艦隊)の船や宇宙ステーションであり、本分は異なりますが軍隊に近い階級制をとった組織とその周辺を描きます。
それ以外で一番謎だと私が思うのですがあまり触れられないのは、地球人類の経済体制です。
「スターフリートは給料制ではない。我々は『貨幣』を持たないのだ」というセリフがあり、現代の弱肉強食資本主義よりも進んだ経済体制であることは覗われますが、あれほど精密な組織・国際関係を描くにも関わらず、非スターフリートな人々の生活は見えてきません。
「SW」では、1作目でルークの叔父叔母の生活と、エピソード1のアナキン少年の周辺(それだってスラム同然ですから極端ですが。)くらいで市井を描いているだけです。
この3−3は「FQ」と同様に思われるかもしれませんが、一つのことが決定的に違います。
「FQ」は文章が主人公一人称であり「主人公の知らない/わからない」を「設定する必要がない」事は上で述べました。。
それに対し「ST」「SW」は、登場人物の訪れない場所、出会わない人物、映像にならない時代なども、必要なだけ創作しておかなくてはならない点が決定的に異なります。
翻訳される海外のSFノベル(主にハヤカワSFなど)には、奇想天外であるにもかかわらず説得力のある世界を持つものが多く、そうでなくても、その「物語世界」として辻褄が外れておらず、コメディー・パロディーなどを前面に出して「他の要素」としている作品も多くあります。
私としては、やはり説得力のある世界で、しっかり展開する物語が好きです。
ただし、これらでなければ「ダメ」というつもりはありません。
「スーパーロボット系」と呼ばれる問答無用な路線の和製アニメや、喫水線をもつ「船」や、「蒸気機関車」が星の海を走り抜ける作品も、楽しいものが多くあります。
(ただし松本零士SFには、それなりに設定が存在しますが。)
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